「SES企業のエンジニアはフリーランスになったほうがいいのでは?」という話はよく耳にします。
実際に、より高い収入や自由な働き方を求めて、SESエンジニアからフリーランスへの転身を選択する人が増えています。
しかし、フリーランスへの転身がすべてのエンジニアに適しているわけではありません。
フリーランスとして働くことは、SESエンジニアとしてのそれとは大きく異なる可能性があり、その違いを理解し、フリーランスになることのメリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。
この記事では、SESエンジニアとしてのキャリアからフリーランスへの転身を考えている方々に向けて、その違いやメリット・デメリットについて詳しく解説します。
「SESからフリーランスになると収入が上がる!」
「経験を積んでスキルがついたらフリーランス!」
という昨今の流行は正しいのでしょうか?
実際の業界の状況を踏まえた上でフリーランス転身を検討しているSESエンジニアの方々が最適な決断を下すための情報を提供します。
SESエンジニアからフリーランスへの道を模索している方に、この記事が有益な洞察と具体的なアドバイスを提供できれば幸いです。
SES企業、SESエンジニアとは?
SESは「システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)」の略称で、IT業界における特定の契約形式を指します。
主に準委任契約に基づき、システム開発、保守、運用といった業務を扱います。
この契約形態の特徴は、成果物の提供ではなく、エンジニアの労働力そのものを提供する点にあります。
この記事では、正社員としてエンジニアを雇用し、この契約に基づきエンジニアを提供する企業を「SES企業」と呼び、そのような企業に所属して働くエンジニアを「SESエンジニア」と称します。
SESエンジニアからフリーランスになれるか?
SESエンジニアの中には、将来的にフリーランスエンジニアになりたいと考える人も少なくありませんが
「フリーランスになるのは難しい」という不安の声もよく耳にします。
しかし実際には驚くことにSESエンジニアからフリーランスエンジニアへの転身はずっとスムーズに進むことが多いです。
その理由は、以下の点が挙げられます。
共通の働き方 : SESエンジニアはクライアント先での開発に携わることが多く、フリーランスエンジニアが通常行う働き方と大きく変わりません。
業務内容の類似性 : SESエンジニアとしての業務内容は、フリーランスと大きくは異なりません。
クライアントと準委託契約を結びプロジェクトに参画しますがSESエンジニアにとっては馴染み深い作業スタイルです。
以上から、SESエンジニアからの転向は 他の業界に比べフリーランスへの移行が比較的容易であると言えます。
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SESエンジニアとフリーランスの主な違い
契約形態の違い
SESエンジニアとフリーランスエンジニアは契約形態において明確な違いが存在します。
以下の表は、これらの契約形態に関する主要な違いを比較したものです。
項目 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
雇用契約 | SES企業との雇用契約 | 特定の企業との雇用契約なし |
勤務先 | クライアント企業に派遣されるが、雇用管理はSES企業が行う | クライアント企業またはエージェントと業務委託契約を結ぶ |
収入の支払い元 | SES企業から給与を受け取る | クライアント企業やエージェントから報酬を受け取る |
自由度 | 雇用契約に基づくため、仕事の選択肢は限られる | プロジェクトやクライアントを自由に選べる |
フリーランスは「個人事業主」であり、クライアントにもエージェントにも雇用されません。
フリーランスエンジニアとして働く場合クライアントやエージェントから直接報酬を受け取ります。
年収の違い
以下はSESエンジニアとフリーランスエンジニアの年収相場を比較する表です。
職種 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
年収相場 | 300万円〜800万円 | 550万円〜1000万円 |
スキルと経験を持つSESエンジニアは、フリーランスに転向することによって、一般的に年収を増やすことが可能です。
SES企業においては、雇用を維持するためのコスト、新人育成、待機中の要因への給与、営業活動にかかるコストなど多くの固定費や間接費が発生します。これらの費用があるために、たとえ優秀なエンジニアでも、企業が支払うことができる年収に限度があるという構造上の事情があります。
一方で、フリーランスエンジニアは、実績があれば高い需要を見込め、より高単価の案件を獲得する機会が増えます。スキルと実績を積むことで、より報酬の高いプロジェクトへの参画が可能になりに年収を向上させることができます。
節税対策
SESエンジニアからフリーランスに転身すると、節税対策の面で大きなメリットがあります。
項目 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
税金・社会保険料 | 給料から自動的に差し引かれる | 利益(売上-経費)をベースに計算し支払い |
経費に申告できるもの | 限定的 | 幅広い経費を申告可能 |
フリーランスでは売上から経費を引いた利益をベースに税金を支払います。仕事に直接関連する費用を経費として申告できます。
フリーランスエンジニアが経費として計上できる可能性が高い項目を示した表です。
経費の種類 | 説明 |
---|---|
家賃 | リモートワークに使用する自宅のスペースに関連する費用(按分) |
電気代 | リモートワークや開発作業に関連する電力消費費用(按分) |
書籍代 | 技術書や業務に関連する資料購入費用 |
交通費 | クライアント訪問や業務に必要な移動費用 |
会議費 | 打ち合わせやプロジェクト獲得のための営業活動に関連する費用 |
勉強会・交流会費用 | 業務知識の向上やネットワーキングに関連するイベント参加費用 |
開発用端末 | パソコンやスマートフォンなど、開発作業に必要な機材購入費用 |
接待交際費 | 取引先との関係構築や維持に必要な接待や食事の費用 |
これらの経費は、フリーランスエンジニアが収入から差し引くことができる費用であり、適切に管理することによって税金を効果的に節約することが可能です。
(経費計上の具体的なルールや方法については、税務の専門家に相談することが望ましいです)
これらを上手く活用したいエンジニアにとって、フリーランスという働き方は非常に魅力的です。
SESとフリーランスの違い 税金処理
項目 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
税金処理 | 会社が税金関連の手続きを代行(副業をしない限り、自分で税金処理をする必要はない ) | 原則として毎年確定申告を行い、所得税等を自己申告・納税する必要がある |
帳簿付け | 不要 | 日々の取引の帳簿付けが必要、年間の収支をまとめた申告書の作成・提出が義務付けられる |
知識要件 | 特に必要なし | 税金に関する基礎知識が必要 |
SESエンジニアは、雇用主である会社が税金関連の手続きを全て行ってくれるため、従業員が特別な手続きを行う必要はほとんどありません。
これに対し、フリーランスエンジニアは自身の収入に対して確定申告を行い、必要な税金を自分で計算して納税する必要があります。
これは、日々の取引の記録保持から年間収支の申告書作成に至るまで、相応の事務作業と税金に関する知識が必要となります。
(これらの業務は税理士に委託することも可能です)
案件選択の自由度
フリーランスとSESエンジニアの間で、案件選択の自由度にも違いがあります。
以下の表に、重要な点をまとめました。
特徴 | SESエンジニア | フリーランスエンジニア |
---|---|---|
案件選択の自由度 | 低い(企業が割り当てるプロジェクトに参加) | 高い(自分で案件を選べる) |
スキルアップの機会 | 限られる(現場の方針に依存) | 自由(希望するスキルを伸ばせる案件に参加できる) |
契約更新時の選択肢 | 限られる(プロジェクト離脱が難しく留保されることが多い) | 柔軟(契約更新時に変更可能) |
フリーランスエンジニアは、案件選択における自由度が高く、自身のキャリアパスやスキルセットに合ったプロジェクトを選択することが可能です。
一方で、SESエンジニアは所属企業の方針や商流企業の事情によって割り当てられることも多いため、個人の希望が通りにくいことがあります。
SESエンジニアからフリーランスへの転身:把握すべきデメリット
自由度の高い働き方やキャリアパスを自ら設計できる点で大きな利点があります。しかし、その一方で、いくつかのデメリットも存在します。
自由とトレードオフになるもの
フリーランスとしてのキャリアは、仕事を自由に選択し、自分だけのキャリアパスを築くことができる大きな魅力があります。
しかし、この自由を手に入れるためには、高い自己管理能力、定期的なスキルアップへの取り組み、そして積極的な人脈構築が必要となります。
収入の不安定性と高度なスキルと実績の必要性
SESエンジニアと異なり、フリーランスエンジニアの収入は、案件がなければ収入がありません。特にスキルセットが市場の需要に合っていない場合、仕事を確保することが困難になるリスクがあります。
フリーランスとして安定したキャリアを築くためには、市場の動向を常に把握し、求められるスキルの習得に努めることが必要です。
フリーランス市場は競争が激しく、高度なスキルや豊富な実績がないと仕事を獲得するのが困難です。特に実績が少ないと単価を上げにくく、報酬を得るまでに時間がかかります。
営業活動の負担
自分でクライアントを見つけ、営業する必要があります。営業スキルや人脈がないとスタートが難しく、多くの時間と労力を要求されることになります。
フリーランスとして活躍するためには、これらのデメリットを理解し、それに対処できる準備が必要です。
案件の獲得から収入の安定化、さらにはキャリアの持続的な成長に至るまで、高度な専門知識と幅広い人脈構築がその基盤となります。
年齢が上がると案件が減る可能性がある
特に50歳を過ぎると、市場での立ち位置が変わることがあります。
この年齢層のエンジニアが直面する現実として、若手に比べて案件を獲得しにくくなる傾向があります。
一般的に、クライアント側は新しい技術やトレンドに柔軟に対応できる若手エンジニアを好む傾向にあります。
このような状況は、50歳を過ぎたエンジニアにとっては不利に働く場合があり、特に新しい技術領域やスタートアップ企業の案件では、若手が優先される傾向が強いです。
しかし、この状況は必ずしも全ての50歳以上のフリーランスエンジニアに当てはまるわけではありません。
長年の経験から培われた深い専門知識や、プロジェクトマネジメント能力、顧客との信頼関係など、年齢を重ねることで得られる価値は多く存在します。
これらの能力は、特定の案件やクライアントにとって非常に魅力的であり、若手にはない独自の強みとなり得ます。
フリーランスとしてのキャリアは、年齢だけでなく、スキル、経験、そして市場との関係性によって大きく左右されます。50歳を過ぎても、これらの要素を意識的に管理し続ける必要があります。
SESエンジニアがフリーランス転身前に準備すべき3つの要素
フリーランスとしての理想像に向けたスキルと実績の構築
フリーランスとして成功するためには、市場で求められるスキルや実績が必要です。自分が目指すフリーランスの理想像をはっきりさせ、その目標を達成するために必要なスキルセットを習得する計画を策定しましょう。
仕事の探し方
フリーランスとして独立する際には自ら積極的に仕事を見つけ、獲得する必要があります。効果的な仕事探しの方法を事前に把握しておくことは、フリーランスとしての活動をスムーズに開始する上で欠かせません。
フリーランス向けの求人サイト、SNS、既存の人脈を活用するなど、さまざまな手段を組み合わせることが効果的です。
フリーランス転身に向けた財務計画
フリーランスとしてキャリアを始めるにあたり、特に収入の不安定性を踏まえた財務計画の策定は必須です。
案件獲得の不確実性により、安定した収入を得るまでの期間を乗り切るための準備が重要となります。そのため、日々の生活費や突発的な支出に対応できるよう、少なくとも6ヶ月分の生活費を貯蓄しておくことが広く推奨されています。
フリーランスとしての新たな道を歩むことは、重要な転機となります。これらの準備を入念に行うことにより、転身に伴う不安を最小化し、成功に向けた土台を築くことが可能となります。
まとめ
この記事を通じて、SESエンジニアからフリーランスへの転身を検討している方々に対し、両者の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
フリーランスへの転身は、多くの自由と可能性を秘めていますが、同時に自己管理能力や不安定な収入などの課題も伴います。
このため、フリーランスとして成功するためには、計画的な事前準備が不可欠です。
SESエンジニアとしての経験を活かしつつ、新たなキャリアパスを探求していく中で、本記事が有益な見識を提供できるよう願っています。